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ITエンジニアが裁判例から学べる教訓 第4回「ベンダーはユーザー業務を知っているべき?」​

July 24, 2017

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ITエンジニアが裁判例から学べる教訓 第1回「プロジェクト・マネジメント義務とは」​

February 24, 2017

弁護士・ITストラテジスト

 

 プロジェクト失敗の責任

 

不幸にもシステム開発プロジェクトが失敗に終わり、システムが完成しなかったとき、その責任は誰が負うべきなのでしょうか。

 

プロジェクト失敗の責任というのは、言い換えると、プロジェクトに投じて無駄になってしまったリソースについて、誰が負担をすべきかいうことになります。法律的に分析をすると、主に以下の2点についてどのように考えるのかという問題となります(なお、以下の記載は、ユーザー企業がベンダーとシステム開発について請負契約を締結していることを前提にしています)。

 

 

(1) ベンダーは報酬を請求できるのか

(2)ユーザーはベンダーに損害賠償を請求できるのか

 

 

まず、(1)について、請負契約は、仕事を完成することが報酬支払の条件となっています。そのため、システムが完成しなかった(=仕事が完成しなかった)以上、ベンダーは請負契約の報酬を受け取ることができないようにも思えます。また、(2)についても、プロジェクトが失敗し、ベンダーはシステムを完成させる義務について債務不履行となり、ユーザーに対して損害賠償責任を負うこととなるように思えます。

しかし、プロジェクトが失敗したとしても、その失敗の理由はさまざまです。プロジェクト失敗の責任は、その失敗に寄与した当事者が負うと考えるのが自然です。

 

実は、法律上もそのような考え方が取られています。この「失敗に寄与したこと」を法律用語で「帰責事由」といい、一般に、債務者が債務不履行責任(損害賠償責任等)を負うには、「帰責事由」が必要であるとされています。

 

判断ツールとしての「プロジェクト・マネジメント義務」と「協力義務」

 

それでは、もう少し具体的に考えていきましょう。

システム開発は、ベンダーとユーザーの共同作業であり、双方が協力することによってはじめてプロジェクトを遂行することができるものです。プロジェクトの責任を検討する際には、このようなシステム開発の特殊性を考慮する必要があります。

 

システム開発に関する裁判例では、上記のような帰責事由の有無を判断する際に、ベンダー側のプロジェクト・マネジメント義務、ユーザー側の協力義務という用語が用いられています。例えば、ベンダーがプロジェクト・マネジメント義務を果たしたにもかかわらず、ユーザーが協力義務を果たさなかった場合には、ベンダーに帰責事由は認められず、ベンダーは債務不履行責任を負うことはないということになります。

 このように、帰責事由を判断するツールとして「プロジェクト・マネジメント義務」と「協力義務」が存在するのですが、「プロジェクト・マネジメント義務」と「協力義務」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。

 

プロジェクト・マネジメント義務と協力義務の内容

 

プロジェクト・マネジメント義務や協力義務というツールは、著名事件である「スルガ銀行対日本IBM事件」(東京高判平成25年9月26日金判1428号16頁)などでも採用されていますが、初めて用いられたのは、東京地判平成16年3月10日判タ1211号129頁とされています。

同判決は、ベンダーが負うプロジェクト・マネジメント義務について、以下のように説明しています。

 

①納入期限までにシステムを完成させるように、開発契約の契約書及び提案書において提示した開発手順や開発手法、作業工程等に従って開発作業を進めるとともに、常に進捗状況を管理し、開発作業を阻害する要因の発見に努め、これに適切に対処すべき義務

 

②注文者であるユーザーのシステム開発へのかかわりについても、適切に管理し、システム開発について専門的知識を有しないユーザーによって開発作業を阻害する行為がされることのないようユーザーに働きかける義務

 

このように、プロジェクト・マネジメント義務は、①開発チーム内の作業を管理すること、②専門的知識を有しないユーザーに対して働きかけることの2つからなるとされています。開発チーム内の管理だけではなく、システム開発の専門家として、ユーザー側に対して働きかける義務が含まれるとされている点に注意が必要です。

 

また、同判決は、ユーザーの協力義務については、以下のように説明しています。

 

          ユーザーは,システムの開発過程において、資料等の提供その他システム開発のために必要な           協力をベンダーから求められた場合、これに応じて必要な協力を行うべき契約上の義務を負う

 

ここでユーザーに求められているのは、仕様を検討するために、業務内容に関してベンダーの質問に適時必要な回答をすること、ベンダーとユーザーの間で共有された課題について適時適切な意思決定をすることなどです。

 

このように、ベンダーとユーザーは、それぞれプロジェクト・マネジメント義務と協力義務を負っており、そのような義務を果たしたかという観点で責任のありようが変わっていきます。しかし、プロジェクトは千差万別ですし、プロジェクトごとの役割分担の仕方やプロジェクトの局面によっても、ベンダーとユーザーの責任の内容は変わってくるはずです。

 

次回は、具体的に裁判例を検討して、プロジェクト・マネジメント義務と協力義務についてもう少し考えてみたいと思います。

 

 

 

参考文献 「裁判例から考えるシステム開発紛争の法律実務」(共著)(商事法務、2017)

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