尾城亮輔コラム

コラム第1回「プロジェクト・マネジメント義務とは」2016/11/6初稿

 

プロジェクト失敗の責任

システム開発プロジェクトが失敗に終わり、システムが完成しなかったとき、その責任についてどのように考えるべきでしょうか。

 

まず、ベンダーとユーザーとの間で請負契約が締結されている場合、ベンダーはユーザーに対して、システムを完成させる義務を負っていますが、プロジェクトが失敗し、システムが完成しなかったのですから、ベンダーは債務不履行となり、ユーザーに対して損害賠償責任を負うこととなるように思えます。

 

また、請負契約は、仕事を完成することが報酬支払の条件となっています。システムが完成しなかった(=仕事が完成しなかった)以上、ベンダーは請負契約の報酬を受け取ることができないようにも思えます。

 

しかし、このように一方当事者が結果責任を負うことになるというのは妥当ではありません。法律上もそのような考え方は取られておらず、債務者(上記の例ではベンダー)が債務不履行責任(具体的には損害賠償責任や債権者による解除等)を負うには、「帰責事由」が必要であるとされています。

 

システム開発の事案も、このような一般的な考え方が当てはまり、プロジェクト開発が中断してしまったとき、裁判で責任関係を明らかにする際には、ベンダー側に帰責事由が存在するかが問題となります。

 

プロジェクト・マネジメント義務

システム開発は、ベンダーとユーザーの共同作業であり、双方が協力をすることによってはじめてプロジェクトを遂行することができるものです。プロジェクトの責任を検討する際には、このようなシステム開発の特殊性を考慮する必要があります。

 

システム開発に関する裁判例では、上記のような帰責事由の有無を判断する際に、ベンダー側のプロジェクト・マネジメント義務、ユーザー側の協力義務という用語を用いています。

例えば、ベンダーがプロジェクト・マネジメント義務を果たし、ユーザーが協力義務を果たさなかった場合には、ベンダーに帰責事由は認められず、ベンダーは債務不履行責任を負うことはないとされることになります。

 

このように、プロジェクト・マネジメント義務や協力義務は、帰責事由の有無を判断する際のツールということができます。

プロジェクト・マネジメント義務や協力義務は、著名事件である「スルガ銀行対日本IBM」(東京高裁平成25年9月26日金判1428号16頁)などでも採用されていますが、その具体的な内容はまだまだ明らかになっているとはいえません。

 

本コラムでは、プロジェクト・マネジメント義務に関する裁判例を取り上げて、その内容を紹介していくことにします。

 

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